映画ネタバレ無し:閃光のハサウェイを見る前に読む:宇宙世紀における時代背景・用語解説

 

ガンダムシリーズ(宇宙世紀)の大前提というか、時代背景に関する解説です。

わかりやすく簡単にまとめようと思いましたが、思ったより長くなりました……どちらかといえば閃光のハサウェイよりも、「逆襲のシャア」の用語解説に近いかもしれません。

作品解説・予習に関しては「閃光のハサウェイを劇場で見る前に予習すべき作品、あるいは閃ハサを見た後に見たい作品」をご覧ください。

※一応映画「閃光のハサウェイ」のストーリーに関するネタバレはしない前提で文章を書いていますが、主人公の人間関係、登場作品、時代背景等の解説は入りますので「ネタバレ極力回避or完全回避したい」という方は自己判断でお読みください。

時代・情勢について

宇宙世紀について

ガンダムの舞台となる宇宙世紀は「人口爆発と環境汚染の問題を解決するために人が宇宙に暮らすようになった時代」の話です。人々は「コロニー」と呼ばれる宇宙に浮かぶ巨大な円筒状の施設郡で生活するようになっています。しかしながら宇宙への進出は政府主導で半ば強制的に行われた「棄民政策」であり、産業基盤が宇宙に移り、地球に暮らす人よりも宇宙で暮らす人たちが多くなっても尚、政治政策は地球主導のものでした。

地球連邦政府やその方針は宇宙に暮らす人たち(スペースノイドとも呼ばれます)からは多くの反発を買いました。ついには地球からもっとも遠いスペースコロニー国家「サイド3」がジオン公国を名乗り、宇宙移民者であるスペースノイドの独立を宣言、自治権を要求したことから始まった戦争が、初代ガンダムの舞台となる「一年戦争」でした。
なんやかんやあって一年戦争集結後にはジオン公国は解体されますが「地球に留まったままの連邦政府関係者や富裕層といった特権階級が地球を私物化し、自分たちを支配している」という不満、地球vs宇宙という対立図式は依然として残り宇宙世紀に横たわったままになっています。

 

地球連邦政府と地球連邦軍

地球と宇宙を含めた統一政府が地球連邦政府であり、地球連邦軍は連邦議会により選出される首相を長とした地球連邦政府の下にあり、連邦安全保障会議を通じて文民統制された自治軍。地球連邦政府は基本的には「(地球)連邦政府」とひとくくりに呼ばれるだけで実態はあまり描写されないことが殆どです。政府高官など一部の描写はあるものの決して人柄が良いとは言えないケースが多い印象。

地球連邦軍の方は総司令以下、参謀本部や、各種部隊など軍組織が形成されています。ガンダム作品では「地球連邦軍の1部隊がクローズアップされて描写される」ことが多いです。主人公が属=地球連邦軍は正義の味方、というわけでもなかったりもします。全体としては「体制側の組織」という感じですが、指導部が無能だったり暴走して戦争になる、若手将校のエリートが暴走して独立軍的な振る舞いをする、といった問題が生じることも有り、時代によって色々問題があったりします。

地球連邦政府も地球連邦軍も略して「連邦」と呼ばれることがありますが(「連邦(軍)の白い悪魔」「連邦(軍/政府)のお偉いさん」等々)、どちらを指しているかは文脈で判断することになったりして、若干わかりづらいです。

 

反体政府・反体制組織

体制側組織への反発や地球そのもに対しての反感、地球の環境維持への強い主張、スペースノイドの独立意識、などを背景に、有形無形の様々な活動が行われています。なかでも旧ジオン公国の関係者を旗印とした反抗組織はスペースノイドからの支持も大きく、時に体制側(地球連邦軍など)へのテロ活動、武力闘争、あるいは戦争へと発展する場合もあります。

 

ニュータイプ

狭義の意味では、モビルスーツで戦闘中に敵の攻撃を避けたり、自分の攻撃を命中させたり、といったパイロットとしての特殊能力であったり、あるいはテレパシー的な能力として作中で描写されます。
広義の意味としては「宇宙に出た人類がなんらかの特殊な能力に目覚める」「すべての人類がニュータイプになれば皆わかりあえる」といった、コミュニケーションを基軸とした「真人類」へのステップだったりとか、物語の大きなテーマとして扱われることもあります。
またアムロ・レイ(初代ガンダムの主人公)をはじめ一年戦争などで大活躍したエースパイロットなどを作中でニュータイプと呼ぶこともあり、そうした英雄がカリスマ化、反体制活動のシンボル化することを危惧している地球連邦政府などは「ニュータイプなんていない/存在しない」というポリシーを掲げていたりします。
狭義の意味でのニュータイプを人工的に作り出す働きかけも行われていて、それは「強化人間」と呼ばれる(だいたいメンタルが弱い)。

 

モビルスーツ

ガンダムをはじめとした各種「人型ロボット」の作中での呼称。ガンダムもモビルスーツの一種だがそれ以外の人型ロボも総じてモビルスーツです。ちなみに人型でないものをモビルアーマーと呼んだりもする(たいていでかい)。なぜ人型か、というと宇宙空間で手足を姿勢制御に用いているから、という理由があるとかないとか。
モビルスーツの一種にすぎないガンダムですが、たいていは強い&カッコイイのが特徴です。ちなみに「ガンダム=エース機」という印象は作中世界でもあって「高性能新型機(ガンダム)を持ってこれる=凄い部隊」みたいな評価をされたります。その新型のテスト中に事故が起こったりテロの標的にされたり、というもよくある話。
(宇宙)戦艦にモビルスーツを載せて運び、戦闘になったらモビルスーツを放出しながら戦うのが宇宙世紀の主な戦闘形態です。

 

アナハイム・エレクトロニクス(AE)

ガンダムとか各種モビルスーツの開発生産をしている会社です、略称(ロゴ)はAE、通称アナハイム。
地球連邦政府にモビルスーツを納品するかたわら、反政府組織やテロリストとかにモビルスーツやらなんやらを供給している真のワル。だいたいアナハイムが悪い。
内部的にも一枚岩ではなかったりするようで余計ややこしいことが起こったりする。

 

サイコ兵器

モビルスーツの一部には、「精神的な働きかけ」で動作する装置や武器等が存在します。複数の小型武器(ファンネル)を飛ばして多面的に攻撃する、など。適正・才能があるニュータイプか強化人間的な人にしか操れない(事が多い)。
サイコミュやサイコフレーム、サイコ××って出てきたら「なんか精神が作用する装置なんだな」って思って頂ければ良いかと。

 

SFとしてのガンダム

スペースコロニー

アメリカの物理学者ジェラルド・オニールが、1969年に考えた「島3号」がベースになっている。
島3号は、「直径6.4km、長さ32kmの円筒を、地球と月の周りにある「ラグランジュ点」に浮かべ、これを1分50秒で1回転させ、地上の重力と同じ強さの遠心力を生み出す」「側面は6つの区画に分かれ、1つおきの3区画は窓になっており、窓の外の巨大な反射鏡で太陽光を取り入れ、反射鏡の角度を変えることで、昼夜や季節を作り出す」というものです。

ガンダム世界のスペースコロニーはこれをさらにスケールアップし、直径6.5㎞、長さ30㎞以上、2分で1回転し、遠心力は地上の重力の90%と大規模にしたもの。ひとつのコロニーで1000万人くらい生活が可能で、地球と月からの重力が、ちょうど釣り合う均衡点(ラグランジュ・ポイント、地球圏に5つ存在する)にスペースコロニー郡がある。
「宇宙で大勢の人が暮らす」という前提を成立させるバジェット。

 

ミノフスキー粒子

物語をミクロな面で支えています。「電波を通さない、特定の条件でものを反発させる(浮かせる)」という働きかけを持つ粒子です。そう聞くと大したことがないように聞こえますが「電波を通さない」ということは「レーダーが使えない」ということなので、ミノフスキー粒子の濃度が高いエリアでは「光学(つまり人間の目やカメラなど)で捉えられる範囲でしか相手を認識できない」ということになります。
現代の戦争で戦艦や戦闘機などの近代兵器が「肉眼で認識できる距離で戦闘する」ということはまずなくて、レーダー上に捉えた相手にたいして遠距離から攻撃、ミサイルなんかもレーダーや各種センサーで相手を追尾していくわけです。これができないことで「ロボット同士が(目視できる)近い距離で戦う」という現代では考えられない状況を物語的に成立させているのがミノフスキー粒子というバジェットなわけです。

一年戦争時代に宇宙でも地球上でもあちこちどんぱちやったおかげで、わざわざ撒かなくてもミノフスキー粒子が存在するシチュエーションも結構起こります。ミノフスキー粒子が濃いエリアだと通信もままならないこともあるようです。

モビルスーツ

ロボットアニメの基本的かつ物理的な制約として「スポンサーのおもちゃが売れる」というのがありまして、幸いガンダムというジャンルは(今では)それなりにヒットし、ガンプラというジャンルを作り上げたわけですが……当然新作が出るたびにガンダムうが出て、そして作品出るたびにガンダムが増えていき、果ては「俺がガンダムだ」と名乗りを上げるパーソンまで出て来るわけです。なのでガンダムと名の付くロボットはいっぱいあって、かつ敵も味方もガンダム、という状況すら生じ得ます。
ただ、作品の中では(少なくとも「宇宙世紀の世界観」では)ガンダムというのはエース機であり、一機(あるいはごく少数機)だけ作られることが多いです。現実世界の世の中的には、試作機・テスト機・一号機、というのはあくまで試作品であり、製品版(量産品)の方が品質が良い/安定していることが多い筈なのですが、ロボットアニメの常として「量産機=なぜか弱い/試作機=なぜか強い」という図式はガンダム世界でも生じています。
量産に向けての試作品というよりはF1レース車のような特注のワンオフ機、といった捉え方のほうが良いのかもしれません。

 

閃光のハサウェイの時代背景・用語

閃光のハサウェイ中に出てきた気になる「わかりづらいかも」という用語のちょっとした解説、以下ストーリーには触れませんが「ネタバレ極力回避or完全回避したい」という人は見たあとにでも読んでいただければ。

 

地球連邦政府

地球と、宇宙を含めた人類の連邦政府。地球連邦軍を従える。人類が宇宙進出を果たした後も「地球に留まったままの連邦政府関係者や富裕層といった特権階級が地球を私物化し、自分たちを支配している」という不満が(特に宇宙に住む人々に)存在し、地球vs宇宙という対立図式がある。

 

マフティー・ナビーユ・エリン

通称マフティー、反地球連邦組織、というか秘密結社。マフティー・ナビーユ・エリンはその代表者ということだが、いち個人であるかどうかも含めてその素性や来歴は明らかになっていない。

 

オエンベリ軍

オーストラリアの北部の街オエンベリに集結した数万の反地球連邦政府分子。反政府組織やその活動が盛り上がると、それに賛同する、あるいは尻馬に乗ろうとして人や物が集まってきますが、それがまさにオエンベリ軍の実態です。そのすべてがマフティーの高い意識や目標を理解し、賛同しているわけではない。

 

マン・ハンター

地球連邦政府内の警察と軍のあいだに新設された不法居住者の摘発にあたっている組織。
地球に滞在するためには連邦政府の発行する地球居住許可証が必要であるため、許可証を持っていない者たちを捕らえて宇宙に強制送還するのが目的だが、仕事ぶりの荒さや乱暴さから、現地の人にはとても嫌われている。

 

地球連邦軍太平洋管区

地球連邦軍はエリアごとに管轄が分かれており、それぞれの管区の治安維持やテロ対策、有事の際の対応などに当たっている。各エリアを率いる長によって方針は様々であり、司令官が変わると情勢もそれに伴って変化することもある。

 

アナハイム・エレクトロニクス(AE)

ガンダムをはじめ各種モビルスーツの開発・生産を行っている会社。略称(ロゴ)はAE、通称アナハイム。
地球連邦政府にモビルスーツを納品するかたわら、反政府組織やテロ組織等にもモビルスーツなどを供給することもある。