映画『竜とそばかすの姫』ネタバレ感想:現実問題として解決しないことはよくある話ではあるわけで

『竜とそばかすの姫』見ました、構図とか音響とかは良いのでスクリーンで見た方が良いタイプの映画でした。

※以下オチを含むネタバレの感想です、ご注意ください。

良くも悪くも細田映画の集大成感あって、かつ「世界に通じる作品を作ってくれ」って誰かがどっかで言ってましたか? という残り香がちらほら落ちてる映画ですね。企画書だと凄い強いタイプの映画かなぁ、という印象。
あと、途中からビックリするほどぱk…オマージュでビックリした。まんまだった。

とにかく出てくる人も扱う要素も非常に多くて、全体的にとっちらかってる感もあるんだけど、(必要性はともかく)主役以外のキャラクターの描写を成立させて、絵にのせてくる手腕というか、演出・構成力は凄いと思います。
一応インターネットとか、VRワールドとかの中で世界と繋がる、という描写だけど、作品として俯瞰すると思いっきり閉じてるんですよね……そこに「繋がれてない孤独感」というのが感じれてそこはちょっと生々しさがありました。

物語としてはどう考えてもツッコミどころを免れ得ない作品なのですが(そこに関してはいったん置いておいて)、でも割と好きなお話でした。

すごい狭い世界の極めてパーソナルな領域の中で生きていて、そこから半歩踏み出せるか踏み出せないか、って話は目の前の問題の解決なんかより個人的には遥かに一大事なんだよ、っていうのが個人的にストンと落ちたポイント。

細田監督、自分が関係無い・興味ないことに対してえげつないくらい無関心、ってネグレクトとかと相性良い気がするんですよね。実は「虐待描写ある」って話を事前に聞いちゃってて、めちゃめちゃ警戒してビクビクしながら見てたんですが、ギリギリセーフのラインでした(むしろそれよりも、途中にある「SNSの賛否両論(つまり半分はDIS)」を大音響で聞く方がキツかった)。
メインテーマである(?)、監督の「虐げられて人間不信になる少年の顔、良いよね、僕は見たい」というところは凄く伝わってきました。

この辺の描写は前提として作劇上のNGというか「殴る蹴るしてるシーンを見せられない」ってのが先に来てるのはあるんだろうな、と前置きしつつも、それでもあえて触れるんですが、「殴らない虐待」っていうのは難しいんですよね。

目の前で暴れようが罵倒してようが、あるいはネグレクトっぽく放置してても、手出してなかったら目に見える証拠は無いわけで、都市部のそこそこ良いおうちに住んでて、お母さん既に亡くなってて、息子さん片方ちょっと自閉スペクトラム気味、みたいな家族構成だったら良くも悪くも色眼鏡で見られる訳で、ちょっとくらいの噂は「軽い風評被害」で済んじゃう気がしますね。実際おうちにお邪魔しても、事情聞いても、物的証拠が無いから公的機関は家の中になかなか手が出せないよね(完全に家から出ちゃうとまた別なんだけど)。

ラストで一人で虐待の現場に突撃していく主人公を見ながら、そんなこと考えてたんですよ。で、虐待者に対して反抗も口答えもせずにタンゴになって、頬を出血するシーン見て「見ず知らずの(現役)女子高生に対して傷害の現行犯キター!!!」ってなったんですよ、これぞ公的権力を味方に付ける最強の武器、この絵をつくるために一人で突貫してったのか、やるな!! って一人で興奮してたんですが、そのまま一人睨み勝ちで土俵際まで寄り切り、という展開でした、えー。

いやホント「誰も、なにも、解決していないのである!」というの感じですが……虐待の問題ビックリするくらいオチてないので、一般的には難しい評価になるのかなぁ、と。主人公が東京に単騎突貫していくときに「大人が揃いも揃って見送るだけ」ってのと併せて2大ツッコミ台無しポイントですよね。
でも虐待って「解決しない方が普通」なのであんまり違和感無いというか、あの状況でなにかしら解決してたら嘘っぽさ全開だし、ふわっと解決して薄っぺらいハッピーエンドとか見たらそれはそれで白けますので。何も解決しないのはむしろリアルだし納得できたんですよ。物語としてはウルトラCの着地点なのはわかります、わかりますが。

個人的に「未成年のケース」はそこまで詳しくないですが、福祉系と連携取りつつ信頼できるシェルターに駆け込んでからなんとかどうにか、って展開…かなぁ……未成年だと個人宅に緊急避難とかすると保護者(虐待者)からの訴えで未成年者略取(誘拐)が成立しちゃう可能性があるので難しいですよね。いやでも物的証拠(映像)があるんでどうにかこうにか、って感じはありますが。
(当事者からも一応信頼がある)助けようとやる気がある人がいて、まわりに大人があんだけ居れば、さすがになんとかなるでしょ、という話ではあります(全員にとって幸せなオチが待っているかはともかく)。

結局「普通の人は手間暇かけてそこまで関わらない」という入り口が最大のネックなので。

ということで、個人的にはオチはそこまで気にならないかなー? という話でした。 この辺を描写するのかしないのか、辻褄合わせるのかどうするのか、ってのを「そもそも描写しない」でバッサリ切っちゃう強い心強い気持ち、無関心、ってのが細田流ですかそうですか。

以上、前振りでした。

ここから本題なんですが、 駅の改札で主人公そっちのけで告白ノロケシーンぶっこんてきたあのシーン、間も芝居も構図も本当に最高じゃなかったですか? なんなんですかあれ、あそこであんな尺使う必要あります? 一応その後の導線に若干関連するとはいえ全く無くても問題なかったですよね? でも最高でした、ありがとうございました。

あと、お父さん移動中にLINEで事後報告したらいきなり重い話し始めてまじドン引なんだけど、みたいな。(「事情は聞いたけど帰ってきたらちゃんと君の口から聞かせてください」くらいで良いじゃん)でも10年越しに娘からまともなリアクション帰ってきたらパパ感動していきなり重い話しちゃうよね、しょうが無いよね、って思って見てた。